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傷は抱えたままでいい 03

2015.11.15 16:02|傷は抱えたままでいい
02 ←前回

誰かを深く愛した分、失ったときの心の傷も深いと誰かが言った。

ならばきっと愛とは鋭利な刃だ。
突き刺さった刃が抜け落ちた時、後に残るのはただの空洞。

愛したという思い出を強さに変える人もいるだろう。
でも心に傷を抱えて、それでも私は生きていける自信があるだろうか。


私は、この心が傷つくことが怖い。
たまらなく、この上なく、どうしようもなく、怖い。



――――保健室での出来事から約1時間前。


「大丈夫だって、すぐにいい人見つかるよ」
そう言って私は目の前にいる里穂にハンカチを差し出す。
彼女はそれを無言で受け取り、目元から頬を伝う涙を拭いた。

綿でできた厚手のハンカチは、微量の液体を事もなげに吸い取る。
私はそれをただ黙って見つめていた。


なんてことはない、恋人と別れたという話を聞いていただけ。
試験休みで部活のなかった私は、特に何の考えもないまま帰り支度を整え、家路につこうとしていた。
そんな時、里穂に呼び止められたのだ。

里穂は有希と一緒で、仲のいい私の友だちだ。
学校でもよく話をするし、放課後遊ぶこともしょっちゅうある。
けどその日の彼女の様子は、いつもと違っていた。


落ち着いたのか、里穂はテーブルの上に置かれた紅茶を一口飲んだ後、大きく息を吐いた。
「……ありがと、もう大丈夫」
「無理しなくていいよ?」
「ううん、ほんとに平気。なんかスッキリしたし」

もう一度お礼の言葉を言いながら、里穂は私にハンカチを返した。
目元は赤く腫れていたが、確かに瞳は明るさを取り戻していたようだった。


「ふーっ。なんかもういいやー早くこの傷を癒してくれる人探さないとね」
「…………うん、それがいいよ」
彼女から受け取ったハンカチを握りしめたまま、私はそう答えた。

次回→ 04


少し時系列が前に戻ります。

ちなみに主人公のチサ、2話で登場した霧子、そしてチサの友だちの有希と里穂はみんな高校2年生の設定です。
あらかじめそう記しておかないと、自分自身忘れてしまいそうなので……

有希と里穂はサブ的なキャラなので、この後もちょくちょく出てきます。
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Comment

No title

こんばんは!
01から遡って読ませていただきました♪
「シリアス百合」とは、自分にとっては読んだことの無いジャンルなのでとっても新鮮です。
まぁ読みなれてたらそれはそれで変かもしれませんが。笑
03の「私」が誰なのか、とっても気になるので今後楽しみにさせていただきます(∩´∀`)∩

No title

こんばんは。
順調にお話しが流れていきますね。

先を楽しみにしています。

Re: No title

夢月亭清修さん>
コメントありがとうございます。

自分としても「シリアス百合」は初めて挑戦するので、
どこまでできるか分かりませんが、頑張って進めてみたいと思います。
どうかこの先も読んでいただけると嬉しいです。

「私」の意味は後々明らかになるかも……?ですかね。

Re: No title

夏雪草さん>
コメントありがとうございます。

この話を書くにあたって、できるだけ1話1話を簡潔に、
それでいて間を長く空けず着実に進めることを目標にしています。
なので現時点でもう少し先までは書いていまして、
この先もストックを貯めつつ更新していきたいと思います。

要所要所の展開と最後の結末は思い描いているものがあるので、
そこまで到達できるようにしたいです。
楽しみにしていてください。
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